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子どもたちの相手をし、ヘトヘトになりながら戻った秘密のアジトには、真剣な表情のスザクがいた。昨日も来ていた事は連絡を受けていたが、不愉快そうなC.C.の様子から、今日も追い返したが居座られたというのが見て取れた。 藤堂に抱きかかえられ戻ってきたゼロはすぐにスザクの腕へと移動した。どうやら藤堂はスザクの顔が怖いのはルルーシュと遊べなかったからだと考えたらしい。藤堂の中のスザクは、ルルーシュとナナリーと遊んだ話を楽しげにし、遊べない日にはふてくされる、そんな小さなガキ大将のままだった。 学生服を着ているし、きっと今日は一日休みだったのだろう。ルルーシュくんと遊ぶのを楽しみにしていたに違いない。まだまだ子供だなスザク君。と、その瞳はとても優しく、おい、お前勘違いしているぞとC.C.は突っ込みたくて仕方がなかった。 「話があるんだ」という真剣な言葉に、C.C.を交え3人だけで話すべきだろうと判断し、カラオケボックスへ向かった。迷うこと無く入った部屋は、現在ルルーシュとC.C.が使用している部屋だった。カラオケボックスだから当然防音性能も高い。しっかりと施錠してから、スザクは話しだした。 「ルルーシュ、1度でいいからナナリーの所に帰れないかな?」 お前は馬鹿か?とルルーシュとC.C.は呆れたように息を吐いた。 なぜナナリーの元に戻れないのか、それは見ただけで理解るだろうに。 17歳だったルルーシュが3歳になったのだ。どうしてこうなったのかの説明もそうだが、幼いルルーシュをナナリーが兄だと認識できるのか・・・悪質ないたずらと捉えられる可能性が高かった。たとえスザクが説明をしてもだ。 そうでなければ、スザクの前では平気な顔をしているルルーシュが、ナナリーに会いたい、話したいと人知れず夜泣きしている姿を黙って見ているなんてことはしない。 17歳のルルーシュなら隠し通せる寂しさだが、3歳のルルーシュには隠し通すことは不可能で、そうやって発散することでどうにか耐えているのだ。どうにも出来ないからこそ、C.C.は寝たふりをして見ざる言わざる聞かざるで通している。 「すざく、むりをいうな。このからだで もどれるわけが ないだろう」 呆れたようにルルーシュが言うと、スザクは「そうなんだけど、でもね・・・」と、何やら一枚の紙を胸ポケットから取り出し、それをルルーシュに渡した。 渡された紙を見たルルーシュは・・・ものの見事に硬直した。一体何だ?とのぞき見て、ああ、これは・・・聞かなくても結論は出たなと呆れたように息を吐いた。 スザクが見せたのは1枚の写真。 それは、やつれたナナリーが泣きはらした顔で眠っている姿だった。 痛々しい、最愛の妹の写真。 硬直から復活し、ぷるぷると小さな体を震わせたルルーシュは、鋭い視線をスザクに向けた。 「すざく!おまえ、ななりーの しんしつに はいったのか!」 いくら幼馴染でも、俺の親友でも、入っていい場所では無い!! 「え!?怒るのそこ!?」 「しかも、ねているしゃしんをとるなどと!せきにんは とるんだろうな!!」 大体、何のために部屋に入ったんだ!寝ている時に入ったのか?寝る前か?いつだ、いつ入った!おまえ、俺がいないからとナナリーに!?見損なったぞスザク!!! 「まって、責任って何!?いや、それより、ちゃんと見てよルルーシュ!」 年頃の妹の寝姿を写真に取られた事で、おかしなテンションになってしまったルルーシュの思考を戻すべく、スザクは写真を示した。だがルルーシュの怒りの矛先は変わることなく、そもそも寝室に何をしに行ったんだ、こんな写真をとってどうする気だ、ナナリーのことが好きなら好きと言ってくれれば、俺の大事な大事な最愛のナナリーだが、お前になら!ナナリーだってお前のことを!と、どんどんヒートアップしてしまい、スザクが何を言っても聞く耳を持たなかった。スザクだから大丈夫だとは思うのだが、やはりスザクも年頃の男。こんなに愛らしいナナリーの寝姿を見て、男として何も感じないなどありえないと、騒ぎ出したので、C.C.はトントンと写真に映るナナリーをつついた。 写真とはいえ、ナナリーになんてことをするんだと、ルルーシュの怒りの視線がC.C.に向く。 「随分と泣きはらした顔をしているな。しかも痩せたというよりやつれたように見える。顔色も随分と悪いな」 これ以上くだらない言い合いを続けさせるつもりはないし、ある意味二人の世界に入っていたため面白くないC.C.は、ナナリーの寝姿にばかり気を取られてルルーシュが気づいていない部分をさっさと指摘すると、ルルーシュは慌てて、今度は食い入るように写真を見つめた。 「な、ななりー!?どうしたというんだ!?」 「昨日、倒れたみたいだよ」 「た、たおれ、たおれただと!?どっ、どういうことだ、すざく!!」 真っ青な顔で尋ねてきたルルーシュに、ミレイと咲世子から聞いた話と、ナナリーの様子を話すと、ルルーシュの顔色はますます悪くなり、このまま失神するのではないかと不安になるほど青ざめていた。一人で座らせるのは危ないなと、スザクは椅子に座っていたルルーシュを抱き上げ、自分の膝の上に座らせた。話を聞いてフリーズ状態になっていたルルーシュは、目が覚めたかのように顔を上げてスザクを見た。そして、C.C.も見る。 「すざく、C.C.」 ルルーシュが言おうとしていることなど、二人はとっくにわかっていた。 ****** ああ、今日もか。とC.C.は目を閉じながら思った。 「うぐっ、ひぐっ、うう、なな、ななりー、ななりー、ひっく、ひっく、ななりーかえりたい、おまえのもとに、かえりたいよ、あいたい、ななりーうう、うぐっ」 幼い子供は毛布にくるまり、寂しさから泣き続ける。 普通の子供相手であれば抱き寄せ、優しくその背をさすり、話しかけ、少しでも寂しさを消し去ってやるのだが、相手は残念ながらルルーシュだ。今こうして泣いているのも、C.C.が熟睡し、この程度の騒音なら起きないと思っているからだ。 もし、泣いていることを知られれば、ルルーシュは泣くことも我慢してしまうだろう。 幼い子供の苦しむ姿にC.C.は弱い。 ああ、早くナナリーのもとに戻さなければ、幼い心が壊れルルーシュが死んでしまうかもしれない。そう、ルルーシュに死なれては困るから、私は・・・。 ・・・というシーンでも入れるべきだったかな?いらないか。 |